2018.07.19更新

問題・次の事例を呼んで,設問に答えよ。

 

 

 横須賀市で仕事をしているT弁護士は,当初,港区新橋に本店を構えて,関東圏だけで数十店舗の支店を展開するというイノベイティブでインクレディブルな弁護士法人に勤務していたものであるが,世の中によく言われる(ごく一部の人間との)人間関係に悩み,「横須賀支店長」という看板を放り出し,「世捨て弁護士」として生きていくことを決めた。

 

 しかし,T弁護士は,それまでの間に十分な金額の開業資金を貯めることができなかったため,小中学校の友人が勤務する某家電量販店を訪れ,旧友であることを最大限に利用した結果,破格の値段で電話機やファックス付き複合機を購入することができた。このファックス付き複合機は,インクがすぐになくなってしまうことを除けば,印刷スピードや操作性において何ら問題がなかった。

 

 その後,開業から数年が経ち,上記ファックス付き複合機の部品の劣化が徐々に進行したことによって,近年,印刷時に白い筋が入るようになった。T弁護士は,だましだまし同ファックス付き複合機を使用し続けたものの,早晩,某ポルコロッソがミラノの工場に愛機の修理を出しに行く最中に某アメリカ人が操縦する飛空艇に撃墜される事態になることは火を見るよりも明らかだった。

 

 そこで,T弁護士は,最近話題の大容量インクタンクを備えた新型ファックス付き複合機を購入することとし,若かりし頃からよく通っている横浜駅西口にある某大型家電量販店を訪れた上,プリンター売り場にいる店員に対し,①事務所で使うのでカラーも含めて大量に印刷する必要があること,②ファックス機能が付いていることは必須であること,③ファックス番号を確実に打ち込むために,タッチパネルではなくダイヤルが付いていた方が好ましいことを告げた。すると,同店員は,上記①~③の機能をすべて充たしている機種(以下,「本件複合機」という。)を紹介してきたことから,T弁護士は,本件複合機の購入を決めた。また,本件複合機は,型落ちの機種だったため,他の複合機よりも価格が抑えられていた。

 

 その際,同店員は,T弁護士に対し,「結構かさばりますけど,持って帰りますか?」と尋ねた。T弁護士は,一刻も早くファックス付き複合機の更新を行いたかったし,また,修理がすっかり終わった自動車で来店していたこともあったことから,「車で来ているので,持てない重さでなければ持って帰ることにします。」と答えた。

 

 すると,同店員は,「少しお待ちください。」と言って別の場所から商品を持ち出してきたうえで,T弁護士に対し,「このくらいの重さなら持って帰れると思いますけど。」と告げた。T弁護士は,実際にその商品が入った段ボールを持って確認してみたところ,7kg程度であったため,購入後にそのまま持って帰ることにした。

 

 同店員は,商品に取っ手をつける作業を行った上で,T弁護士をレジに案内した。T弁護士は,クレジットカードで決済を行った上で,横浜駅西口地下駐車場まで商品を運び,修理が終わっている愛車のラゲッジルームに商品を乗せて事務所に戻った。

 

 T弁護士は,事務所に着くとすぐに商品が入っているダンボールを開封し,設置作業を進めることにした。商品保護のために取り付けられているテープ類を取り外し,インクタンクにインクを入れようとしたとき,T弁護士は,黒色インクの充填口しかないことに気付いた。そんなはずはないと他の部分を確認すると,ファックス時に使用するダイヤルはなく,そもそもモデムを差し込む場所もなく,ただのプリンター(以下,「本件プリンター」という。)であることが判明した。

 

 なお,その後,T弁護士は,同家電量販店と幾度もやり取りを行ったものの,結局一度も謝罪の言葉はなく,なぜこのような事態が発生したのかも不明なままであったが,本件複合機と本件プリンターの型番が似ていたこと,商品のダンボールには商品の写真がプリントされていたものの本件複合機と本件プリンターの外見が酷似していたことなどから,同プリンター売り場の店員が商品を持参する際に謝って本件プリンターのダンボールを持ってきてしまったものと結論付けた。また,本件複合機と本件プリンターの価格にほとんど差はなく,クレジットカード決済を行ったこともあり,T弁護士は,事務所でダンボールを開封するまでの間,本件複合機と本件プリンターが入れ替わっていることには全く気付かなかった。

 

 

設問1.上記事例におけるT弁護士と某家電量販店との間の法律関係及びその効力について,意思表示理論にも十分留意した上で,詳論せよ。なお,民法の一部を改正する法律(平成29年法律44号)にも言及すること。

 

設問2.その後,T弁護士は,本件複合機と本件プリンターを「交換」することで某家電量販店と合意したが,クレジットカードの決済記録を取り消すために,休日返上で横浜まで出向くことになった。T弁護士は,某家電量販店に対し,何らかの損害賠償請求をすることが可能か,論ぜよ。

 

設問3.T弁護士は,今回の事件について,愛車が壊れてしまったときよりもはるかにショックを受けているが,いまのT弁護士の感情について,300字以内で説明せよ。

投稿者: アダジオ法律事務所

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